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2022/10/25 すべて次世代型教育

2022年度京都大学高大連携講座 野生動物学初歩実習③

 10/23(日)の野生動物学初歩実習は前回と違い、半袖でも暑いくらいに晴れた天気の中での実施でした。
 入園した後、各班に分かれてジュニアアドバイザーと生徒たちで今日の実習について打ち合わせをしました。班分けも終了し、これからは各班で「何を観察していくか」について決定していく作業になります。この観察対象を決める作業がこの実習で一番大変なポイントです。話し合いの合間には、ジュニアアドバイザーから指導が入ります。「その動物を観察するとして、本当に個体の識別ができるのか」や「対象にした行動は研究対象にできるような特別な行動だと考えていいのか」といった生徒たちに不足している視点を適宜補ってくれていました。また、「わからなければ、実際にできるか試しに観察しにいこう!やってみてから考えてみよう!」と煮詰まった議論をストップさせて観察に連れ出してくれるなど、上手に生徒たちを導いてくれていました。

 
 
 さて、スキャンサンプリング用の道具もジュニアアドバイザーの皆さんが用意してくれていました。(大量のストップウオッチは箱から出すのだけでも一苦労です。)観察の方針が決まった班から観察に向かい、自分たちが観察したいと考えた動物のところで実際に観察が始まりました。

 
 
カモを対象とした班は「個体識別がまったくできない…どうしよう」や「ターゲットとなる行動をしている個体がまったくいない」、「前回の観察時と行動パターンが全然ちがう」など自分たちが考えていた以上に観察がうまくいかないと嘆く声が上がっていました。
シマウマを観察していた班は「メスが近くに寄ってきたときに、オスが柵に何度も突進する行動をとる」という新しい気づきを得ていました。「仮に繁殖行動と考えたとき、ウマの繁殖時期は暖かい時期なのに10月下旬に生じると結論づけていい?たまたま暖かかったから?」など観察中にも疑問はどんどん出てきます。(この班はシマウマの他にもミーアキャットとチンパンジーも観察対象の候補として挙げていました。)

 
 
 観察がある程度進んだら、再度集合して話し合いが始まりました。ジュニアアドバイザーからアドバイスをいただきながら、何を観察していくのか決めていきます。「チンパンジーは時間帯や天気によって外に出てこない(場合によっては施設側が出さない)こともあるし、一日中ずっと観察できるかわからない」という指摘には生徒たちも「あ!」という表情になっていました。単に自分たちが見たいものという視点だけで対象を選んでいると、観察段階に入ってから結局観察ができなかったということになりかねません。研究は設計・準備が命です。それがよく理解できた瞬間だったのではないでしょうか。
 まだ3回目の観察ですが、この短い間にも生徒たちに確実な成長がみられました。これもお忙しい中、全力で生徒たちに向き合っていただいているジュニアアドバイザーの皆さんのおかげだと感謝の念に堪えません。答えが出ないと感じる苦しみも終わりが見えない議論のつらさも研究にはつきものです。そこに伴走してもらえている安心感に支えられながら、生徒の皆さんはどんどん思考と実践を繰り返してくださいね。半年後の成長を心から楽しみにしています!