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2023/04/04 すべて次世代型教育

2022年度 野生動物学初歩実習 特別企画@天王寺動物園

3/29(水)に本年度も京都大学の学生アドバイザーが主体となり、春期休暇特別短期プログラムを企画してくれました。本年度も「動物学にふれる」という主旨で実施されましたが、場所を天王寺動物園に変えての実施となりました。
この企画は、次年度の高大連携プロジェクトの実施に向けて、興味のある生徒に動物学を知ってもらうための企画です。昨年度は、本校と北野高校、堀川高校の3校での実施でしたが、本年度は洛南高校・洛星高校からの参加がありました。
 桜咲く園内を、天王寺動物園長の向井先生に案内していただきました。

 
 
まず、開会式です。天王寺動物園の山中諄理事長からお話をうかがいます。天王寺動物園は日本で3番目にできた動物園で108年の歴史があります。令和三年に大阪市直営から地方独立行政法人となり、「国際社会に貢献し、世界に誇れる動物園」を目指す中で、新たなサービスを模索していく必要があるとおっしゃっておられました。新しい設備によって来園者を楽しませるだけでなく、近年の動物福祉の観点から動物たちの幸福も大切にした動物園を目指しているそうです。「今回の実習で生徒の皆さんがひとつでも何かを持って帰ってもらえたら嬉しいです」とお話していただきました。

 
 
 次に、園内を大阪大学の山本誉先生と動物園職員の中島様に案内していただきます。なんと、これから動物園に導入する予定の小型トランシーバーを使わせていただけることになりました。園内ガイドやバックヤードツアーなどの際、「説明する声が聞こえない」や「大声を出してはいけない」といった状況下でも、しっかりとコミュニケーションをとることができる装置です。今回動物園で初めて使用するということで、「是非感想を聞かせてください」と、貴重な機会をいただくことになりました。

 
 
 ホッキョクグマのところでは、行動観察にチャレンジしました。「観察して気になる行動があればどんな形でもいいのでしてみましょう」と観察が始まります。初めて実習に参加する生徒がほとんどでしたが、皆沢山の気づきを記録していました。

 

 
 
 
本年度の野生動物学初歩実習に参加していた生徒は、さすが!「個体追跡法を用いて…」と実習の学びを存分に発揮してくれました。
 行動観察にチャレンジした後は、動物展示の工夫について、説明を受けました。動物のエンリッチメントを考えた展示の仕方や密猟について考える展示、大学との共同研究の展示、特別展など、〈エンターテイメント性を高めながら動物にストレスを与えないような工夫〉や〈来園する人たちに動物について学んでもらう工夫〉について教えていただきました。

 

 
 
 
 園内での活動の後は、①向井園長、②中島様、③山本先生のお三方からそれぞれの研究やお仕事について、お話していただきます。
①向井園長

 
 
 以前、北海道の円山動物園でご勤務されていた時の、ホッキョクグマやユキヒョウ、オオワシの繁殖についての貴重な映像を交えながらお話いただきました。(『動物のお医者さん』という漫画に登場するキャラクターのモデルになったことがあるそうです。)動物園には担うべき四つの役割(「種の保存」、「教育・環境教育」、「調査・研究」、「レクリエーション」)があり、動物園・水族館こそが種の保存に貢献できる施設だと言われているそうです。飼育される動物のエンリッチメントを大切にしながら、レクリエーションという場であることも忘れず、動物について学んでもらうことで、野生動物の保全や共生を目指す社会を作りたいというお話に感銘を受けました。
②中島様

 
 
 動物の健康管理や性ホルモンの調査のため、採血や体重測定、爪切り、削蹄、ケージ収容など、職員の方には沢山のやるべきことがあります。しかし、そういった行為を動物がすんなりと受け入れてくれる訳ではありません。なので、そういった行為を受けてもらえるようトレーニングをするそうです。ライオンやハイエナの採血トレーニングなど、貴重な舞台裏の話を聞くことができました。
③山本先生

 
 
 ご自身が天王寺動物園の協力の下で研究されている、ホッキョクグマの行動についてお話していただきました。母子間の相互干渉においてホッキョクグマ特有の行動が確認できたそうで、研究会でも表彰されたそうです。「野生下の動物で観察しても今回のような結果が得られたかわからない。動物園だったからこそできた研究です」とお話しされていたことが印象に残りました。研究内容をエキスポシティで発表するなど、講演イベントなどにも精力的に参加されているようです。生徒たちも「聞きに行きたい」と言っていました。

 
 
 講演を聴いた後は、質問タイムです。生徒たちで長蛇の列です。皆積極的に質問します。それぞれの質問に先生方が本当に丁寧にご回答いただきます。
 半日の企画でしたが、内容盛り沢山の非常に有意義な時間を与えていただきました。理事長から最初にお話いただいた、「何かひとつ」を生徒たちは「持って帰った」と確信しています。
 最後になりましたが、今回の企画にご協力いただいた、天王寺動物園関係者の皆様、生徒たちのために様々な準備をしていただいた野生動物学実習アドバイザーの皆さんに、御礼申し上げます。今後もよろしくお願い申し上げます。

次年度の野生動物学初歩実習も、絶対良いものにしましょうね!